<ハリガネロック>
「ハリガネロック」を知って初めて、私は「漫才」は面白くて凄いものだということを知った。 「話芸」という言葉があるけれど、2人の口だけで色んな世界を飽きさせずに見せてくれる。 色んな人の漫才を見て来たけれど、私はハリガネロックのしゃべくり漫才が一番合う。 私が福岡にいた頃、ハリガネロックはほぼ毎月福岡の劇場の仕事が入っていた。 そして私はほぼ毎月、ハリガネロックを見に劇場に行っていた。 どの回も面白かったという訳はもちろん無いけれど、思い出すことの9割方は、 「ハリガネロックが活き活きしながら漫才をしている姿」だ。 とにかく活き活きしてたし、堂々としていた。 その姿を見る度に、ハリガネは「漫才」を物凄く好きで、「漫才」を凄く尊敬しているんだろうなぁと思った。 ハリガネロックが漫才を大切にしていたから、私は他の芸人さんがやる漫才も楽しみに見るようになった。 ハリガネと同じように漫才を愛していて、ハリガネとはまた違う切り口で笑わせてくれる漫才師もいれば、(「漫才師」なんて名乗らないで欲しいし、これが「漫才」なんて言わないで欲しい)と、見ながら憤慨するようなネタをするコンビがいることも分かった。 そんなことを繰り返しながら、“自分が合うネタ”が少しずつ分かっていった。 漫才を舞台やテレビで見るとき、私は (この人達は、口二つだけでどれだけセンターマイクの向こう側にいる人達を惹きつけるんだろう) と思いながら見る。 それは、ハリガネロックの漫才をみていくうちに、“漫才はそういうものだ”と思うようになったからだと思う。 2人の口と腕だけで、目の前には無いはずの世界が見えて、それがどんどん広がっていく。 ハリガネのしゃべくり漫才は、その醍醐味を存分に味あわせてくれるものだった。 時が経つにつれてハリガネロックの漫才のスタイルはいつのまにか少しずつ変わっていき、それと比例するように私もだんだんと、以前ほどにハリガネロックを追わなくなっていった。 だけど、「ハリガネロックの漫才」が、私が漫才を見る時の基準であることはしばらく変わらないんじゃないかなと思う。 ハリガネロックは、強気でしたたかで、だけど楽しそうで、そして真剣に漫才をしているあの姿が一番似合うと思う。 (04/10/24) |